「たのしいね、」編集部(私)に、一通の目撃情報が寄せられた。
すこし前から探し求めているブツが、都内某所のイベントで売られているという。
事件の真相を確かめるため、我々取材班(私)は現地に飛んだ。
どんなもの?
お目当ては、このビルの8階で行われているようだ。
ホビージャパンゲームフェスティバルは、国内ホビーメーカーの雄、HobbyJAPANが主催するボードゲームのイベント。
HobbyJAPAN製品を中心にした有名ゲームをプレイする各種大会のほか、物販などが行われているという。
扱われているのは、当日限りの限定品や、まだ広く流通していない新商品、そしてメーカー在庫ならではの箱潰れ等の特価品など。
私の欲しいものも、そこに並んでいたというのだが…。
たのしいね!
受付等はなく、ビルの広間に勝手に入っていく形式である。
果たして会場は、盛況であった。
テーブルが各所に置かれ、ゲームに興じる人たち、それを眺める人たちの姿が見える。
随所の赤い服をまとっている人たちがスタッフであろう。
ちょうど『コードネーム』の試合の呼び込みを行っているところであった。
ちなみにコードネームは「にけつッ!!」という深夜番組で、千原ジュニアさんが遊んだ様子を熱心に話していたことでも話題になったボードゲーム。
物販コーナーはすぐに見つかった。
この写真でみるとまだまだ商品が残っているように感じるかも知れないが、重要なのは人の引き具合である。
賑わう会場にあって、物販コーナーは空いているのだ。
すでにめぼしい品は狩りつくされたあとなのである。
実際、この写真の枠外の物販テーブルにはすでに空白が目立っていた。
写真の部分は中央に商品が寄せられた状態だと推測できよう。
そして、当然の帰結であろうが、私の欲しいものは、とうとう見つからなかったのである。
我々取材班(私)は、ほんとに急遽、物販を見たかっただけなので、あっという間に会場をあとにすることになった。
我々は、ここに来るのが、おそすぎたのだ。
会場の出入り口通路の窓は広く、新宿中央公園の向こうのビル群の眺めは良かった。
ビルを後にした私は、曇天模様を突き抜ける太陽の熱を浴びながら歩き、考える。
私の欲しいものは、本当にあそこに存在したのだろうか。
いつか手に入れることができるものなのだろうか。
この目で確かめられなかった以上、目撃情報の真偽も闇の中となってしまった。
会場ビルから通りを挟んで向かいの熊野神社に立ち寄る。
参拝し、近々のご縁を祈った。
なかよし(私)は、夜の新宿に消えた。