最近遊んだボードゲームに、『種の起源』というタイトルのものがありまして。
見た目が最高によく、テーマもよいし、遊んでもそれなりに面白いのでおすすめなのですが。
ところでみなさん、チャールズ・ダーウィンについて詳しいですか?
私はぜんぜん詳しくないんですけど、適者生存説やら進化論やら、そんなことを唱えた人だっていうことくらいは知ってました。そんでもって、乗っていた船がビーグル号っていうこともまあ知ってました。
で、この「種の起源」というゲームは親切にも、テーマの時代背景や用語みたいなものをそれなりに説明してくれるんですよ。
ところがですね、箱の裏や説明書を見るとHMSビーグル号って書かれてる。書かれてるけど、その呼称についてはなんの説明もないわけです。
みなさん「HMS」って分かりますでしょうか?
それって説明を端折ってもいいくらいの常識的な知識なんでしょうか。
HMS???
つい気になって調べちゃったので、ここに書いておくことにしました。
『種の起源 ボードゲーム』の内容や感想については、別のブログを書いたのでそちらもみてね▼
『種の起源 ボードゲーム』パズルを解くたびガチャが引けるよ【100点】 - #ボードゲームたのしいね
目次
艦船接頭辞とは。
結論から言うと、「HMS」とは、慣習的に船の所属を表すための略字のひとつ。イギリス軍籍の艦船であることを指す言葉のようです。
H、M、Sがそれぞれ、Her/His Majesty's Ship のイニシャルになっています。
これは艦船接頭辞と呼ばれていて、船の名前の前に付ける言葉なんだそうです。
艦船接頭辞は21世紀の現在でも広く用いられており、HMSももちろん通用する呼称。
ちなみに日本の自衛隊の艦船にも艦船接頭辞があって、JDS(Japanese Defense Ship)もしくはJS(Japanese Ship)となっているのだそうです。
Hisなのか、Herなのか。
さて、せっかくなのでもうちょっと接頭辞とビーグル号の話を続けます。
ゲームの舞台になるのは1835年の9月~10月頃と完全に期間まで。
こんなにしっかり設定されていることがあるんですね。ボードの盤面に、日付まで記されています。
この頃、ダーウィンにとっては初めての(そして唯一の)、ビーグル号は2度めの、調査大航海の真っ只中。
その頃のイギリス君主はというと、ウィリアム4世、男性の国王の時代なので、HMSが表す意味は、"His" Majesty's Ship Beagleということになりますね。
お~、謎が解けるとこまで解けたぞ✌
その後のダーウィン。
ゲームでは描かれないことですが。
航海以前は、医学部をやめて鬱屈していた日々を過ごしていたとされる若きダーウィン。測量艦に乗るチャンスを掴んだことで、もともと興味のあった博物学への道が開けました。
1836年に航海を終えイギリスに帰国したダーウィンは、ロンドンを拠点に研究活動に邁進。自身の知見や同時代の様々な報告などをもとに研究を進め、やがて進化論の仮説を提唱します。
1959年に発表した著作『種の起源』は、世界中で読まれることになったのです。
ガラパゴス諸島での旅から『種の起源』の発表まで、20年以上掛かってたんですね…知らなかったな。
ダーウィンは進化論がずば抜けて有名ですが、地質学や生物学など、今では細分化された様々な分野での業績も、非常に優秀なんだそうです。
知らなかったな~。
その後のビーグル。
3度めの航海に出たばかりの1837年、ウィリアム4世は崩御。
イギリスは、同じハノーヴァー朝の女王、ヴィクトリアが収める時代になります。
ヴィクトリアは、現在のエリザベス女王の高祖母(おじいちゃんのおばあちゃん)に当たる人物です。
ここから先のHMSが意味するところは、Her Majesty's Shipです!
ビーグル号は1843年に帰国。
測量航海はこの3度目が最後となり、沿岸警備監視船に改装されて以降はイギリス国内で活躍したようです。
ヴィクトリア女王の在位期間は長く、1901年に崩御するまでの約64年続きます。
しかしビーグル号は、それよりも早い時期には、廃棄されてしまったようです。
Wikipediaよれば1870年に解体されたと記されています。
が…?
もっとその後のビーグル。
Wikipedia以外の資料に当たると、興味深い話がまだまだありそうです。
オックスフォード大学の博物学者キース・トマソンによれば、解体が決まるまでの詳しい経緯や、解体の顛末を断言できる資料は残されていないようなのです。
文献によっては、解体よりもずっと早い時期に日本に引き渡されて、練習艦として活躍したという説すらあるのだとか。実際それは、ビーグルと名付けられた9隻のイギリス軍艦のうちの、2隻目の物語で…いや、この話はまた別の機会にしましょう。気になる方は文末に参考資料を付けておくので自分で当たってね。
いずれにせよビーグル号は、現在ではその痕跡すら残っていない船であるということは、どうやら間違いないようです。
なんだかとっても残念です。
などと思っていたら、チリのナオビクトリア美術館が、数年の歳月をかけてビーグル号のレプリカを建造するプロジェクトを行っていました。
いやーレプリカでいいから、観てみたいものですね!
再びボードゲームについて
ゲームデザイナーとしてクレジットされているのは、Gerard Ascensi, Ferran Renaliasというおふたりです。
種の起源の原語版は2019年で、デザイナーのおふたりとも商業作品を手掛けたのはこれが初めての様子。
しかし2022年には、国際宇宙ステーションをテーマにした『1998 I.S.S』と、モーツァルトのパトロンになるゲーム『Lacrimosa』の発表が控えているようです。
私は遊んで面白いゲームが好きでありたいので、テーマだけで買わされるのは本意ではないのです、が。
どちらも、興味深いタイトルになりそうですね…!!
気になったらまた調べて、気に入ったら何か書きますね。
参考資料
wikipediaの各項目
キース・トマソンによるビーグル号についてのレポート
H.M.S. Beagle, 1820–1870 | American Scientist
チリ博物館のレプリカ建造ブログ
Building the HMS Beagle Replica
種の起源ボードゲームについて
種の起源 ボードゲーム 第2版 完全日本語版 | ArclightGames Official
On the Origin of Species | Board Game | BoardGameGeek
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