これはなに?
近現代のフランス絵本を集めたエキシビジョン。
東京都庭園美術館で2018年3月21日~6月12日まで開催中。
ちなみに鹿島茂さんは明治大学の先生(現役)。
個人の収集品(の一部)で構成されているという点にもすごみがあります。
どんなもの?
会場の作品は概ね時代順に並んでいて、前半は19世紀、後半は20世紀です。あんまり新しいものはないようでした。20世紀前半くらいまで。
時代の変遷を通じてみると、いくつかの異なる角度で感想を抱きます。
なんといっても、ずいぶん最近になるまでフランスには、子ども向けの絵本がなかったんだろうな、というところ。だって絵がかわいくないんですよ。
子ども向けっていう発想がそもそもなかったのかもしれない。これがフランスに限ったことかどうかは分かりません。あるいは一般大衆向けの書籍がなかったということなのかもしれない。
そんな中に『レ・ミゼラブル』やジュール・ヴェルヌなんて名前が登場するあたりにはさすがの私もおお!という感慨を覚えました。
商業的成功が認められると、だんだんと市場ができてきたのでしょう。あきらかに子ども向けの本が登場し始めます。徐々に、今のセンスで観てもかわいい絵柄が増えてくるし、いよいよ文章よりも絵がメインな、いわゆる絵本ぽい本が出てくる。
本の中身がすっかりカラー印刷になったな、と思うのもこのあたりです。白黒よりはやっぱりカラーのほうが子ども受けがよかったんでしょうね。
で、いわゆる「バンドデシネ」もこの頃に登場します。フランスではマンガの元祖といわれるバンドデシネは意訳すれば「描かれた帯」。帯状の横長ページに、コマ割りされていないキャラクターがレイアウトされている様子はまさにバンドデシネでした。初めて見た!
20世紀に入ると、作家性、多様性が顕著になります。特に印象的だったのは擬人化ですかね、動物の。
「ぞうのババール」ってご存知ですか?
あれ息子さんが途中で作品を引き継いだんですってね。世襲された絵本シリーズ。知らないことだらけ。
フランス国内におけるアールデコや、ロシアのアヴァンギャルドといったムーブメントの影響もしっかり感じ取れて、すごく面白いです。
たのしいね!
写真が撮れる作品はあんまりなかったのですが、その中でもお気に入りの擬人化動物シリーズを紹介するのでごらんください。
「あるイヌの災難」のイヌ。
「マルタンとジョッコ」のクマ。
「砂漠の王様オスカール」のライオン。
色使いもすごくないですか?
ミッフィーちゃんとかあきらかにこの系譜にある気がしてきますよね。あれはオランダですからきっと関係ないけどね。
会場に行けばもっといろいろ魅力的な、ザリガニとかカエルとかの作品が見られるんで、会期残りわずかですがぜひ観に行ってください。
「レ・ミゼラブル」のコゼットの新旧挿絵とかが並んでるのまじさいこーっすよ。
会場では、当時の絵本の復刻版も買えちゃいますよ。なかよし。