これはなに?
宿命を背負う王、バーフバリの伝説…。
潔く、豪快で、真摯な、インドの映画!
どんなもの?
魅力と可能性に満ちた王道ムービー。
とりあえず観て欲しい。できれば劇場で。
この作品を、私のような拙い言葉で説明することは困難だ。しかし案ずることはない。それを限りなく理想に近い形で成し遂げている人を見つけた。まだ観る気になっていないという人は、ひとまずこの文章に目を通してきてほしい。
【日報】おまえはバーフバリで現代の神話を目撃する(逆噴射聡一郎)
とにかく本編を観てもらえるなら私の感想なんてどうでもいいと思ってしまっているのだが、いちおう書く。
たのしいね!
バーフバリは、音楽やアクションがかっこいいという人もいる。
たしかにその通りだけれど、それだけではとても足りない気がする。音楽やアクションを個別に観れば、バーフバリだけが特に優れている点があるわけではない。実験的な、奇をてらったことを行っているわけでもないと思う。
王道。
しかしそこに挑戦がある。
例えばアクション。本編を観れば、私程度の映画ファンでも気がつくような、ハリウッド大作アクション『アベンジャーズ』にオマージュを捧げるかのようなシーンがいくつもあることに気がつくだろう。
具体的には、キャプテンアメリカの、丸いシールドを活かした肉弾戦。防ぎ、投げる。あるいはホークアイが弓を射るシーン。矢を追うカメラワーク、それを受け止めるロキ。詳しくなくても思い出す、印象的なシーンがあるだろう。
それらはただのオマージュにとどまらない。なにより、それらを繰り出すのはすべて、主人公バーフバリただひとりなのだ。
盾で殴るバーフバリ。弓を射るバーフバリ。空を飛ぶバーフバリ。ある時は剣で、弓で、鎖で、鎧で、裸で、拳で。
圧倒的な、英雄。王道。
真のヒーローの前には、ひねりや伏線、CGであることを隠さないCGの多用や、スローモーション、リフレイン、空想と回想と現在を行き来する物語、ご都合、愛、暴力、強さ弱さも何もかも、ひれ伏すしかない。そのことがよくわかった。
アベンジャーズのアクションは、メンバーの個性を際立たせるものでもある。それをたったひとりにやらせてしまうのだ。さも当然だと言わんばかりに、自身に満ちた態度で。完璧に。さすがは選ばれし王。
そもそも王とはなんだろう?
家や血筋といったものに、私たち現代の日本人はあまりに無縁であるかもしれない。しかしバーフバリは、揺るぎない態度で示してくれる。
「命を授けるのが神、救うのが医者、守るのが王族だ」と。
本作は、王道だけでできている。なんなら、あなたが知らないことは起こらない。格好いい音楽とアクション、典型的な物語、露骨な描写の積み重ねしかない。
しかしこんな王道を、私はこれまで観たことがなかった。積み重ね、拡大し、育て、磨き上げれば、こんなにも新しい体験が生まれるなんて思わなかった。バーフバリは21世紀初頭の映画的王道を極めることでそれを超えた、稀有な作品であるといえるだろう。
本作を観てあなたも、マヒシュマティ王国の臣民の気分を味わって欲しい。
王を讃えよう!
お気に入りのシーンは、セクハラ役人の指を切り落とした罪で裁判に掛けられた妻の前で「お前は間違っている」とか言い出すところ。なかよし